
部下にもっと自分で考えてもらいたいときは?

相談にのる時のポイントが知りたい!
こんな疑問を解決する内容です。
本記事では、『思考を停止させてしまう教え方』について解説します。
人の考えは、先行する情報によって大きく左右されてしまうものです。
相手のためを思った迅速なアドバイスは、結果として成長を阻害してしまいます。
急がば回れ!部下や後輩への押し付けはやる気を奪う危険アリです。

それでは続きをどうぞ!
本記事の内容
- いきなりのアドバイスがNGな理由
- 成長させるための指導や質問への対応
-
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いきなりの具体的なアドバイスはNG

意外とやりがちな間違いは、「相談や質問に対して丁寧に答えを教えてあげる」という方法です。
これをやってしまうと、相手は無意識のうちに自ら考えることをやめてしまいます。
つまり、成長するための機会を奪ってしまうことになるわけです。
専門家や識者の意見は思考を停止させる
決断に際して、専門家や上司などの自分より知識がある方の意見には権威性が働いてしまいます。
また、課題に対するアドバイスや答えを先出ししてしまうと、 まるで自分で思考したかのように錯覚させてしまうわけです。
先出しアドバイスを題材にしたおもしろい研究をご紹介します。
エモリー大学の神経経済学者であるグレッグ・バーンズ氏らによる、「専門家の意見と意思決定のメカニズム」について調べた研究です。
結論としては、専門家からアドバイスを受けると、意思決定を司る脳の中枢が活動を停止する傾向が見られました。
被験者について
- 実験参加者は24名
- 平均年齢は23歳(標準偏差±5.3)
- 参加者の大多数は大学生
研究手法の概略
- 短時間で2つの選択肢から意思決定する際の被験者の脳をfMRI(脳の活動を測定する機械)で調査した。
- 選択肢は「報酬金を確実に受け取る」と、「報酬金が増える可能性があるダイスを振る」という2択。
- 「被験者だけで意思決定する場合」と、「エモリー大学の経済学者チャールズ・ノゼア氏のアドバイスを受けてから意思決定する場合」の2グループを比較した。
結果の要約
- 被験者自身のみで意思決定したグループは、脳の前帯状皮質と背外側前頭前皮質が活性化していた。
- 経済学者のアドバイスを受けたグループは、これらの領域は活性化していなかった。
脳の前帯状皮質や背外側前頭前皮質は、意思決定や計算を行う際に活性化する領域です。
ちなみに、経済学者からのアドバイスは非常に保守的で、多くの場合受け取る金額が高確率で増える条件あっても「報酬金を確実に受け取る」を指示しました。
そして、アドバイスを受けたグループは条件の良し悪しに関わらず指示に従う傾向が見られ、特に条件の悪い時ほどその傾向が強かったそうです。
限られた条件下での実験結果でしたが、専門家や上司の意見は聞き手の思考を停止させる傾向があると考えた方がよさそうですね。

専門家であってもすべてが正しいわけではない
先ほども説明したとおり、専門家の指示内容がいまいちな場合であっても、その権威性などから全面的に信じてしまう傾向があります。
しかしながら、専門家や上司の意見が100%当たるわけではありませんよね?
特に、変動性の高い環境を相手にする場合は、専門家の予想でもあてにならないことも先行研究からわかっています。
変動性の高い環境を相手にする経済評論家と呼ばれる人たちが、お金持ちばかりではないことからもうなずける内容です。
答えは教えないで一緒に思考する

では、どのようなアドバイスならよいのでしょうか?
前提として、上司や先輩の役割とは、部下や後輩を成長させることです。
答えを教えてしまうのでなく、自分の頭で思考するように導く必要があります。
考えるきっかけを与える
一緒に思考するといっても、専門家や上司の方は方法論やベストアンサーをすでに知っていることも多いはず。
迅速にアドバイスしたいという気持ちを抑えて、まずは相談者の意見を引き出すことに注力しましょう。
「現時点でどのような対策を考えていますか?」といった具合に質問を返すことで、相談者自らが思考するモードになるわけです。
相手を否定してはいけない
相談者の経験や知識が足りない場合、まったく見当はずれな意見や対策案を出してしまうこともあります。
ここでやってはいけないのは、相手の意見を否定するということです。
否定することは、相手の自己肯定感を下げることになります。
ネガティブな意見や経験に対して、脳は過剰に反応してしまい、思考の硬直を招くのです。
「そういう考え方もあるかもね。では、こうした問題が起こったらどうしますか?」のように、否定せず違う角度からの質問で思考を促しましょう。
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思考停止させない指導方法のまとめ
さいごに、この記事のポイントを再度確認しておきましょう。
ポイント
- 部下へ先出しアドバイスは、相手が思考する機会を奪ってしまう。
- アドバイスの良し悪しに関わらず、専門家や上司の意見は鵜呑みにされやすい。
- 相談にのる際は、部下の意見を否定しないよう気をつけながら、相手の考えを引き出す質問で導く。
少し遠回りになりますが、自分で答えを導き出すプロセスを学ぶということが、部下や後輩の成長に直結します。
上手な指導者とは、答えを与えずに相手に思考させるような人たちのことです。
参考文献
- Jan B. Engelmann, C. Monica Capra, Charles Noussair, Gregory S. Berns, “Expert Financial Advice Neurobiologically ‘Offloads’ Financial Decision-Making under Risk,” Public Library of Science ONE, March 24, 2009.
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