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こういった「人間関係」に関するお悩みについて取り上げます。
本記事は、「より円滑にお互いが助け合うには?」ということをテーマとして設定しました。
ここで取り上げる助け合いとは、会社や組織のことだけでなく、友人関係や資格を有する専門家とのやりとりも含まれます。
より円滑にコミュニケーションするためのポイントは、「助けを求める側」と「助ける側」とで、お互いの認識にズレがあることを念頭に置く必要があるんです。
どちらの場合も、自分の立場で考え過ぎると認識ズレに陥りやすいですよ!

それでは続きをどうぞ!
本記事の内容
- 「助けを求める側」と「助ける側」との認識のズレとは?
- より円滑にお互いが助け合うためには?
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「助けを求める側」と「助ける側」との認識のズレとは?

社会的な生き物である僕たちの日常は、人間対人間のやりとりによる相互作用で成立しているため、こうしたコミュニケーションによる悩みは生涯付きまといます。
自分と他人は違う存在同士なため、考え方も違えば、価値観だって違うのが当たり前です。
しかしながら、お互いにぶつかり合いや奪い合って個々で生きていくよりも、助け合う関係を構築していった方が社会的にも有利ですよね?
そして助け合うということは、「助けを求める側」と「助ける側」が存在することになり、誰もがどちらの立場にもなり得ます。
「助けを求める側」は遠慮をし、「助ける側」は過小評価する
会社の部署内や学校、夫婦間などにおいて、助け合いの相互バランスがうまくいっていないことに起因し、その歪みは次第に問題へと発展していきます。
そうならないためにも、相互の認識のズレを理解することが重要です!
「助けを求める側」と「助ける側」 の認識のズレに関する研究をご紹介します。
トロント大学のヴァネッサ・ボーンズ氏らによる、「助けを求めることによる心理的障壁や、助ける側による過小評価」について調べた研究です。
この研究の結論として、「助ける側」は他人が助けを求める可能性について過大に評価したり、助けを求めることへの不快感についても想定を見誤ってしまう傾向が見られました。
まずは「助ける側」の過大評価についての研究です。
研究手法の概略
- 参加者は、ピアアドバイザープログラムへの参加を志願したMBAコースの35名の学生と、学部でティーチングアシスタントをしている91名の学生。
- 学期の初めに、「学期の間に、あなたのもとへ何人の学生が相談に来ると思いますか?」という質問への予測をしてもらう。
- 学期の終わりに、実際に学期中に相談に来た学生数を報告してもらう。
結果の要約
- ピアアドバイザーの人たちは、学期初めに平均12.6人が相談に来ると予想したが、実際は平均7.6人だった。
- ティーチングアシスタントの人たちは、学期初めに平均17.8人が相談に来ると予想したが、実際は平均14.7人だった。
疑似ではなく現実に「助ける側」の立場である彼らは、「助けを求める側」が支援を求める可能性について過大評価をする傾向がわかりました。
つぎに、 「助ける側」の過大評価 に加え、助けを求めることへの不快感に関する認識のズレについての研究です。
研究手法の概略
- 調査はオンラインで行われ、参加者の232名には、「助ける側」「助けを求める側」「中立」の役割がランダムで割り当てられた。
- 「助ける側」の人は、他人から助けを求められた経験について記述してもらった。「助けを求める側」の人には、他人に助けを求めた経験について記述してもらった。「中立」の人は事前記述の作業は行わなかった。
- 助けが必要な場面のシナリオを4種類読んでもらい、「助けを求めるか否か」や、恥ずかしさなどの「不快感指数」などについても数値化してもらった。なお、4種類のシナリオは、3つの役割グループに応じた観点でそれぞれ準備されている(全12種類)。
結果の要約
- 助けを求める可能性についてのスコアは、「助ける側」=4.02、「中立」=3.74、「助けを求める側」=3.44
- 不快感指数は、「助ける側」=3.77、「中立」=3.86、「助けを求める側」=4.14
要するに、「助ける側」や「中立」の立場の人たちは、「助けを求める側」の人と比べると、「困っている人は自ら助けを求めてくる可能性が高い」と判断する傾向があることを示しています。
さらに、 助けを求めることの恥ずかしさなどの不快感についても、過小評価する傾向があることがわかりました。
求めているのは実用性よりも頼りやすさ
ヴァネッサ・ボーンズ氏らの研究には、こうした認識のズレを改善していくためのヒントも示してありました。
「助ける側」の人たちは、ヘルププログラムの利用率が低いといったときに、その原因が「助けを求めることへの不快感」によるものだと結び付ける可能性が低いことを指摘しています。
既存の支援策を評価する際なら、その実用性や利便性などに着眼してしまい、心理的なハードルについてはスルーしてしまいやすいということ。
また、人物間においても、「助ける側」すなわち先輩にあたる立場の人たちは、相手が相談してくるための心理的なハードルを軽視しやすいことが推測できます。
研究の中でも、新入社員の立場すなわち「助けを求める側」の人は、「実用性を強調したメッセージ」よりも「頼みやすさを強調したメッセージ」で上司から仕事への支援を申し出てもらうことを望んでいることが指摘されていました。
しかしながら、これまた「助ける側」の人たちは、「相手は頼みやすさよりも実用性や利点を強調してもらうことを望んでいる」と誤った判断をする可能性が高かったのです。
「助けを求める側」というのは、合理的な考え方を優先するというよりは、相手への申し訳なさや他人を頼ることによって自らの評価が下がることを避けたいという心理が働きやすいと言えますね。
「助ける側」の人は、こうした心理的なハードルの存在を知るとともに、そのハードルを下げてあげることが必要です。
より円滑にお互いが助け合うためには?

仕事などビジネスでの場面をイメージすると、やはり効率性や実用性にフォーカスしがちな人の方が多数派なのではないでしょうか?
しかし、これまで見てきたとおり、「助ける側」の思惑は「助けを求める側」のものとはマッチングしていないわけです。
効率よくやったとしても、結果が伴わなければ本末転倒であり、むしろ必要な部分には時間をかけるという選択も考えなければいけません。
つまり、「助ける側」の人たちは、過剰になる必要はありませんが、いつでも助けられるということを周囲に共有しておくことをおすすめします。
自己犠牲は天秤を相手に傾けすぎている
「いつでも助けることができるということを周囲に伝えよう」といっても、本当にいつでも他人を助けることのできるほど暇な人は現実には少数派です。
また、自己犠牲型のギバーでは、テイカーやマッチャーに利用されやすく、無理がたたると自分自身が燃え尽きてしまう可能性さえもあります。
何ごともバランスをとることが大切です。
あなたが「助ける側」の立場であれば、ぜひ次の3つのNG項目を意識してみてください。
- 見返りを求めるのはNG
- 親切の押し付けはNG
- 時間の浪費はNG
直接の見返りを求めるのではなく、あなたのギブによっていずれ発生するであろうギブの連鎖を意味づけとしておくとよいでしょう。
チーム内に与える人物がいるだけで、周囲も少なからず影響されますし、それこそが助け合いへ前向きな組織への近道です。
また、相手が求めていないのに手を差し伸べることは、いわゆるお節介と受け取られてしまう危険があります。
頼ってもらうためのハードルを下げておくだけでも十分ですので、相手が困っていると勝手に決めつけて突っ走らないようにしましょう。
最後に、これが一番大切なんですが、自分自身の時間を無駄に浪費しないことです。
あなたが上司だとして、自らの課題が手つかずなのに他人の課題ばかり手伝っている部下のことをどう感じますか?
ギブに向いている案件は、「相手よりも自分の方が短時間でクリアできること」つまり、あなたの得意な分野がおすすめです。
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成功する人と成功しない人はどういうタイプの人たちで、対人関係でどういった行動をとるのか?
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この記事でも軽く紹介していますが、「とにかく与えなさい」みたいな単純な内容ではなく、あなたのギブアンドテイクの概念もきっと生まれ変わることになるでしょう。
5分間の親切というルールがちょうどいい
これは、心理学者のアダム・グラント氏が『GIVE & TAKE「与える人」こそ成功する時代』の中で解説している方法です。
簡単に説明すると次のとおり。
- 自分なら5分間でできることについて手助けを行う。
シンプルですが、なんと言っても自然と時間の浪費を抑えることが可能になるのでおすすめです。
自分なら5分でできること、すなわち「自分の専門や得意な分野」による手助けが最適と言えます。
相手にとっては5分以上の時間のかかることだとしたら、あなたの与えた5分間以上にメリットが発生するというわけです。
日常から相手が相談してきやすいような関係性構築を意識した上で、相手から相談された際に5分間ルールを参考にして手助けしてみてください!
上司と部下との関係などの管理指導とは、少し場面が違いますのでご注意を。
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助け合いに関する認識のズレについてのまとめ
さいごに、この記事のポイントを再確認します。
ポイント
- 「助ける側」は、「助けを求める側」が自ら助けを求めてくる可能性について過大評価する。
- 「助ける側」は、「助けを求める側」の助けを求めることへの恥ずかしさなどについて過小評価する。
- 相手が相談しやすくなるには、「実用性」よりも「頼りやすさ」を強調する。
- チーム内のギブは自然と連鎖していきやすいが、自分ばかりにならないようバランスが重要。
- 相手よりも自分が得意なことであれば、助けるときに時間がかからないのでおすすめ。
人はどうしても、自分の立場から物事を判断しやすい傾向があります。
「助ける側」と「助けを求める側」との認識のズレは、相手の立場を考えることがお互いに足りていないことの表れとも言えるわけですね。
参考文献
- Bohns, V. K., Flynn, F. J. (2010). Why didn’t you just ask? Underestimating the discomfort of help-seeking., Journal of Experimental Social Psychology, 46, 402-409.
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